年報第2号の発刊に寄せて
学会長 黒沢義孝 (日本大学名誉教授)
日本信用格付学会の年報第2号が出来上がりましたのでお届けいたします。日本信用格付学会は社債・国債等の債券の格付けに関する研究、及び資本市場等における信用格付けの普及と発展のために2021年11月に設立されました。
第1回大会(2021年6月12日)に続く、今回第2回大会(2023年9月10日Zoomによるオンライン開催)は統一テーマとして「パンデミック発生後、マクロ政治・経済環境の不確実性が高まるなか、信用格付けが果たした役割」と題して開催しました。午前中に柴田宏樹氏(S&P事業法人格付部長)による「パンデミック発生後のグローバル格付動向」について、殿村成信氏(日本格付研究所・事業格付第二部長)による「パンデミック発生後の日本の電力会社の格付け動向」についてご講演をいただいた後、関西電力の垣口裕則氏(経理部長)に加わっていただき「電力業界の課題と信用力サポート要因」についての座談会を行いました(モデレーターはアジアエネルギー研究所の廣瀬和貞代表)。
午後の部は特別講演として「中国の格付け市場の現状と課題」(森田アソシエイト代表・森田隆大氏)、「日本の格付けの導入とその後の状況」(当学会会長・黒沢義孝)、「グローバル・国内格付会社の政治経済学:故Timothy J. Sinclair教授を偲んで」(シェフィールド大学・後藤文人氏)等のご講演をいただき、自由論題報告として「倒産予知モデルによる企業格付けと財務数値の推移に関わる研究-コロナ禍における日本企業の実態分析」(北海道国立機構帯広畜産大学・白田佳子氏:討論者・総務省政策統括官室・目 篤氏)についてのご報告がありました。これらのご講演およびご報告は本・年報第2号に論文として掲載致しましたが、森田氏の論文については諸般の事情により次回の年報第3号に掲載することと致しました。
今後、本学会としては債券格付けの基本的な問題として、(1)起債者と投資家の間における情報の非対称性が格付けによって是正されているか(即ち、格付け制度が有効に機能しているかどうか)、および(2)起債者・格付会社・投資家の間で利益相反が生じていないか等についての実証分析を行い、(3)企業等の中長期資金調達において社債の利用が増えないのはなぜか(社債の利用を妨げている原因は何か)等についての研究を進め、日本の資本市場の健全な発展の一助となればと思っております。
なお、日本信用格付学会では大学・研究所等の教員・研究者の方、大学・大学院(修士・博士コース)の学生の方、格付会社・企業等にご勤務の方々の学会へのご参加を歓迎しておりますので学会ホームページを通じてご連絡いただければ幸甚です(学会ホームページ: https://www.cra-j.org/)。